来る2012年に英国ロンドン市で開催予定の、もう一つのプロジェクト初となる海外企画「ロンドン駅伝-London Ekiden(仮)」の視察に行ってきました。そもそもこの企画は、構想こそ2008年からあったものの、長らく沈黙に伏してきました。
しかし、オリンピックの開催を前に沸き立つロンドンの様子が脚光を浴びるようになってきて、いよいよ「もう一つの」も、と立ち上がったわけです。
さて、日本発の陸上競技である「駅伝」は、以外にも世界ではあまり行われておらず、おそらく英国、ロンドンでも行われたことはないでしょう。おそらく・・・。
そこで、事実確認中ではありますが、「ロンドン駅伝-London Ekiden」と題し、ロンドン初の駅伝大会を、ゴミ拾いルールを設けて開催しようと計画しているのです。気になる大会コースと開催時期ですが、これは2012年にロンドンで開催されるオリンピックとパラリンピックの間の期間、すなわち2012年8月13日から28日に、各競技場を繋ぐオリジナルコースを設定して毎日開催します。
毎年4月に開催されているロンドンマラソン(Virgin London Marathon)コース(※オリンピック内のマラソン競技コース含む)も大いに参考にします。
オリンピック閉会後、オリンピックパークをスタートし、およそ2週間かけてぐるっとロンドンを回ってパラリンピック開会前日に再びオリンピックパークに到着します。この間、各競技場間のコースではゴミ拾いを同時に行い、回収した量によってタイムとのポイント換算して当日完結の記録を発表します。
日本発の「駅伝」を日ごとに開催して、タスキを繋ぐことで「つながり」を作り、ゴミを拾うことで「新しい直接的な地域貢献とスポーツの試み」を海外展開していきます。
現在の日本は、世界最大のゴミ拾い国家であるといえないでしょうか。これほどまでにゴミ拾いを行う非営利の団体、ゴミ拾いをCSR活動の一環と捉える企業がある国は他に知りません。ゴミ拾いのイベントは日本各地で開催され、多くのボランティアが参加し、成果を出しています。
しかし、それでも道に落ちているゴミを見かけない日はなく、不法投棄もまだまだ存在します。ポイ捨てをする人もいなくなったわけでなく、ゴミ拾いをしたことがある人なら人為的に発生したと思わざるを得ないゴミを幾度となく目にしているはずです。
こうした問題があり続ける限り、またはこのポイ捨てや不法投棄を問題と捉えるのならば、ゴミ拾いをする団体や活動は今後も増えていき、いつの日か解決に限りなく迫る日が来ることでしょう。
かく言う当プロジェクトもこれを問題として捉え、イベントをメインとした啓発活動を行っているわけだが、この5年、国内に存在する多くのゴミ拾いをする団体やCSR活動がようやく根付いてきていると感じ、一定の道筋ができたものと解釈しています。
そこで、国内での活動は引き続き継続して行っていくが、日本以外の国にも同様の問題が存在しているのであれば、これの実態を調査し、解決に向けて働きかけると同時に、日本発の手法を駆使することで、文化交流にまで発展させていくことができればあらたな道筋が見えてくると考えました。
「ゴミ拾い」と「駅伝」は日本の言わば「お家芸」。私たちが考案したこの新しいスポーツカルチャーがどこまで通じるのか、海をまたいでチャレンジしていきます。
滞在中は、街中をできる限り徒歩で周り、ロンドン市内で発生するゴミの回収、分別状況を見てきました。
基本的にポイ捨てはあり、ゴミはどこにでも落ちていました。
これは想定していた通りですが、ロンドンは世界的な観光地ということもあり、観光客の出すゴミも含めると、市民のモラルだけではどうしようもないといった現状です。
それでも都心部は、清掃員の姿が多く見られ、ここでは問題視するほどのゴミは見られませんでした。
それよりも、私のようなゴミを見にくるという相当な物好きでない限り、ゴミの存在には目も触れず、街のあちこちにある歴史的な建造物に圧倒されてしまうことは間違いないでしょう。
それが都市の魅力であり、マイナス要素をものともしない部分ではあると思いますが、ナポリ(ナポリのゴミ問題)のような手が着けられない状況に至っていない点は、一定の施策がとられている結果です。
しかし、一歩観光地から郊外の住宅街、またはそれに続く幹線道路を歩くとゴミの溜まり場があったり、明らかに手が着けられていない地域があり、都市の景観を害している印象を受けました。置かれた状況は日本とあまり変わらない様です。
その中で、ゴミの回収と分別はどのように行われているか見てみると、家庭ごみは家の前にまとめて置かれている他、各家庭ごとに指定のゴミ箱があり、それを決まった日時に自治体のゴミ収集車が回収していく仕組みの様です。街中には大きな移動式のリサイクルボックスが所々に置かれていて、それぞれ回収するゴミの内容がわかりやすいイラストとともに記載されています。
例えば「ミックスペーパーのみ」「缶、ペットボトル、ガラスなどリサイクル可能なもののみ」といったカテゴリー分けができていました。
では、リサイクルボックスに記載されていないゴミはどうするのか。プラスチック容器や牛乳パックなどはスーパーなど大型の施設に大規模な回収ボックスへ。
生ゴミは肥料などに再資源化され、公園や川辺の緑化に役立てられている様です。
ゴミの処分方法は、焼却処分ではなく埋め立て処分が基本ですから、ゴミの再資源化は重要な課題です。市もゴミ問題には積極的で、ボリス・ジョンソン市長が主導してチーム・ロンドン(Team London)というボランティアチームが街の清掃活動、リサイクル事業を後押ししています。
ボリス市長はサイクリング愛好家としても知られ、レンタサイクルシステムを導入し、市内400箇所にステーションを設置している。自転車専用道路までありました。
ロンドン駅伝のスタートは、オリンピック閉幕翌日の8月13日を想定しています。
場所は、視察当時も建設中だったオリンピックパークで、ここが最も多くの競技が行われるスポットとなります。ここからコースは東ロンドンの再開発エリアを進んでいくわけですが、このエリアはかつてテムズ川沿岸で造船や倉庫といった河川交通の一大拠点として栄えました。
しかし、戦後の不況期から金融立国へと経済体制が移り変わるにつれて、次第に取り残されていったというエリアでもあります。日本でも都心部の鉄道会社の所有地や大規模工場跡などの再開発は現在も引き続き行われていますが、ロンドンにおいてはこのエリアがまさにそうなのです。
1990年代後半から整備されてきて今や、「BARCLAYS」や「city」を冠した高層ビルが林立する新たな金融街を形成しています。
オリンピックが決まったこともこのエリアの再開発に拍車を掛け、オリンピックパークに隣接するエリアにはストラットフォード・インターナショナル駅が新たに作られ、ユーロスターの停車駅となる日も近そうです。
さらには、ウェストフォードという欧州最大規模の複合型ショッピングセンターもオープンして、視察当時も大勢の人だかりができていました。オリンピックは開催後の施設利用や持続性が問題視されていますが、もともと再開発の波があったエリアなので、相乗効果が今後も期待できそうです。
コンパクトオリンピックの特性としては、経済性もさることながら環境負荷の少なさが挙げられます。ハード面においては大きく二つの手法があり、一つは既存施設の利用。
もう一つは自然環境の利用です。既存施設の利用では、オリンピックパーク以外で行われる競技は、エクセル展示場、日本で言えば幕張メッセやパシフィコ横浜の様な巨大なコンベンションセンターです。
その他ノース・グリニッジ・アリーナはドーム型スタジアムで2000年のミレニアム事業の一環で建設された特徴的な施設で、これらの会場では体操やボクシング、レスリング卓球などの室内競技が行われます。
では屋外競技はどうか。サッカーは会場がロンドンに収まらないこともあり、英国各地で予選が行われますが、決勝はサッカーの聖地ウェンブリースタジアムで行われます。テニスの会場もご存知ウィンブルドンが会場です。
その他、ボート競技やトライアスロンは広大な敷地を持つ市内の公園にある池で行われます。馬術なども公園内に既存の施設が整っています。今回すべての会場は回れなかったのですが、こんな街のど真ん中で!?と思うような配置に、コンパクトさを感じずにいられませんでした。
記憶にも新しいロイヤルウェディングですが、その様子を映像で見ると国民の盛り上がりが大きかったことがわかります。
しかし、当時、いまどきロイヤルウェディングといっても騒ぐことはないと、国民の間では盛り上がりに欠けていたと聞きました。
それでも当日はあの熱狂ぶりで、今も土産物屋にはウィリアム王子とキャサリン妃の写真をあしらったグッズが数多く並んでいます。私も思わず記念に買ってしまいました。
そこへきて来年のオリンピック。
夏前には暴動が起き、視察時点でも国会議事堂前のウェストミンスター寺院にテントを張って格差是正のデモが起こっている現状。不安定な国際情勢に英国を含め、ヨーロッパは金融不安をぬぐいきれていません。
テロの危険性もまだあります。市民はオリンピック開催に、まだ本腰を入れて盛り上がっている雰囲気は見えませんでした。
しかし、それでも結局いざ、開幕となると大いに沸くというのが大方の予想だそうで、それが英国流なのかもしれません。
ロンドンには市内を東西に横切るテムズ川が流れています。テムズ川無しにロンドンは語れないと言われ、そもそもこの街は、川を渡る橋が建設されたところを発端に発展していったといいます。
それが現在のシティで、世界の金融センターの一角です。このテムズ川は、一見したところ緩やかに流れる大河ですが、川岸まで行くと結構波立っており、波止場に打ち寄せる波は海のそれを連想させます。
川にはフェリーが行き来し、観光船として、市民の移動の手段として自動車、鉄道に次ぐ交通手段となっています。潮の満ち引きはあるものの、河岸にはいくつもの浮き桟橋が設けられていて、乗り降りの都合は良いといえます。
川の水は海水が混ざっていて茶色く濁っていますが、悪臭がするわけではなく引っ切り無しに航行する船舶の影響でかき乱されて濁っているといった印象です。地図で見るとよくわかりますが、本当に市内のど真ん中を流れているので、都心部の渋滞や満員電車の解消に一躍買っているのは間違いありません。
もう一つのプロジェクトでは、ウェルカムラフト事業の中で、今後河川の有効利用を推進するためのプロジェクトを実施していく予定なので、今回の視察は大きな収穫でした。
テムズ川を囲むか形でロンドンの北側を流れる運河があります。ゆくゆくは両端ともテムズ川に合流しますが、住宅街や公園をゆったりと流れる運河も有効活用されていました。
中でもリトル・ヴェニス(LIttle Venice)と呼ばれるエリアは、まさに水の都を髣髴とさせる水上都市の様でした。ゴンドラの様で、屋形船の様でもある船が数多く停泊していて、街中を行きかいます。各地には水門もあり、治水管理もされていて、川には一定の水量が保たれていました。
その証拠とばかりに、とある区間では川の両岸に多くの船が、所狭しと停泊していて、何ヶ月も航行していないのではと思うほど、川に"根付いて"いたのです。船には住所らしき識別ナンバーがあり、そこで生活している人がいるのは明らかでした。制度的なことまではわかりませんでしたが、河川の利用に関しては日本の首都圏よりは一歩先を進んでいる印象を持ちました。
オリンピックパークに話を戻すと、ここではパーク内に新たに川を作っています。水の流れを作り出し、園内に憩いと自然との調和を生み出します。既存運河と接続される計画で、オリンピックを期に新たな河川が開かれる形です。
これに対し、1964年の東京オリンピックの開催前に行われたことは、川の閉鎖ともいうべき突貫工事でした。首都高の整備に、土地の取得と整備が間に合わなかったため、お堀や河川を埋め立て、または高架道路を河川上に建設しました。有名なところでは東海道の基点となる日本橋です。橋と交差するように首都高が日本橋川を覆っています。
東京も2020年夏季オリンピック招致に、正式に立候補したので、河川利用を今一度考え直して、一度閉ざした川の開放を望みたいです。
河川の利用状況を、ロンドンと日本の首都圏の都市とで比べると、日本の都市の未来像が垣間見られた印象で、今後の都市再生において河川は、経済性も含めて都市環境を整備する上で重要な位置を担ってくると考えられます。
オリンピック自体の開幕まであと300日を切っています。同時にそれは当プロジェクトのリミットでもあります。今後の展望としては、コースの選定が急務で、その後現地仕様のオリジナルゴミ拾い駅伝ルール作りを行います。参加者は現地在住の方々、オリンピック・パラリンピックの観戦客、その他長期滞在者の方々がそれぞれ同じ割合で、と考えています。
初めての海外企画と言うことで、様々な困難はあると思いますが、一歩先行くために、ゴミ拾い駅伝からはじめてみます。主催者よりも参加者の方が現地に詳しいという環境の中で、どれだけ完成度の高いイベントを実施できるのか、一度でも現地を歩いて見られたことは大きな収穫でした。以上、ロンドンレポートでした。
「もう一つのプロジェクトは」、「ゴミ拾い駅伝」、「ウェルカムラフト」、「もう一つのメディア」、「もう一つのトラベル」、それに更なる可能性と余白の追求を続ける「もう一つの事業」を手掛ける複合事業型NPOです。単一の分野にとらわれず、様々な社会的な問題を、もう一つの切り口から解決に結び付けていきます。2005年12月発足、2011年12月より特定非営利活動法人(NPO法人)
